83歳の新人スパイが老人ホームに潜入!? アカデミー賞ノミネートのドキュメンタリー、7月公開(映画.com)

出典元:映画.com

第93回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた「THE MOLE AGENT(原題)」が、「83歳のやさしいスパイ」の邦題で、7月に公開されることが決定。2020年に第33回東京国際映画祭で、「老人スパイ」のタイトルで上映されていた。80~90歳のスパイを募集する求人に応募した83歳のセルヒオの、老人ホームへの潜入調査に迫る。

【フォトギャラリー】現代の介護施設の在り方を問いかけるドキュメンタリー

 妻を亡くしたばかりで、新たな生きがいを探していたセルヒオはある日、不思議な求人を通じて、スパイに採用される。依頼内容は、ある老人ホームの内偵。依頼人は、母が虐待されているのではないかという疑念から、誰にも気付かれずに、毎日ホームでの生活の様子を報告してほしいと語る。スパイとして老人ホームに“入居”した、誰からも好かれる心優しいセルヒオは、調査を行うかたわら、いつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となっていく。第68回サンセバスチャン国際映画祭で観客賞と最優秀ヨーロッパ賞を獲得し、米批評家サイト「Rotten Tomatoes」で満足度95%(4月8日時点)を記録した。

 監督を務めるのは、小さな世界で起こった日常の出来事を通じて対象となる人物に密着し、問題を描き出す独自のスタイルを築き上げてきたマイテ・アルベルディ。当初は「私立探偵についてのドキュメンタリーを作りたい」という思いから、老人ホームの許可を得て、3カ月にわたりスパイとは明かさずに、セルヒオを撮影。当初はその調査結果に注目していたが、取材を進めるうちに、多くの依頼が依頼主とその家族のコミュニケーション不足によるものだと知り、相互理解の欠如の背景に焦点を当てることにしたという。

 本作は、セルヒオの“スパイ活動”をユーモアたっぷりに映し出すとともに、家族と離れて暮らす入居者たちが漏らす本心から、現代の介護施設の在り方を問いかける。日本でも、新型コロナウイルスの流行で、老人ホームでの面会制限や介護うつなど、介護をめぐる問題に、一層関心が高まっている。アルベルディ監督は、「鑑賞後に、親や祖父母に連絡したいと思ってもらえたら」と話す。さらにアカデミー賞へのノミネートを受け、次のように思いを明かした。

 「このような並外れた注目すべき映画賞の候補に選ばれたことを光栄に思います。選んでいただいたアカデミーとドキュメンタリー部門に心から感謝しています。ラテンアメリカ女性の製作チームにとって、この種の夢は不可能に思っていましたが、今年は人生を新たな観点から見ることができました。この度のノミネーションは、世界が常に高齢者たちを大切に思っていることを示し、平均寿命を延ばすことだけでなく、生きたいという意欲を高めることが重要であることを私たちに思い出させてくれます。昨年は非常に多くの損失がありましたが、私たちは高齢者に改めて目を向け、彼らが『孤独のパンデミック』という、新型コロナウイルス流行前のパンデミックに直面していたことに改めて気づかされました。この映画が、高齢者とその家族たちの交流に役立ったことをとても誇りに思います」

 「83歳のやさしいスパイ」は、7月にシネスイッチ銀座ほか全国で順次公開。

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